突然の病気や事故、そんなときに頼りになるのが『救急車』。
日本では誰でも救急車を呼ぶことができますし、その利用にお金はかかりません。
でも、ちょっと待ってください。
私たちが『無料』で利用している救急車、本当に“タダ”なのでしょうか?
実は、その裏には多くのコストがかかっており1回の出動につき約4万5千円とも言われています。
この記事では、救急車の『無料』のカラクリと、その裏にある本当の費用や仕組みについて元救急隊員の経験も交えて解説します。
■ 救急車は“無料”で利用できるが…
まずは制度面の確認です。
日本の救急車は、通報・現場到着・病院搬送まで一貫して無料で提供されており、利用者からの直接的な料金請求はありません。
これは世界的に見ても非常に手厚い制度で、公的資金(=税金)で全て賄われているのが特徴です。
■ 実際にかかっている費用:1回あたり約4万5千円
実際に救急車が1回出動するごとに、約45,000円の費用が発生しているとされます。
この数字はあくまで平均値ですが、複数の自治体や学会が公表している数値からも3〜5万円の範囲に収まっているのが事実です。
■ 費用の内訳とは?どこにお金がかかっているのか
救急車の出場には以下のような費用が発生しています。
① 消耗品・医療資器材
救急現場では、感染対策や衛生管理のために多くの使い捨て資器材が使用されます。
たとえば:
- 酸素マスク、心電図の電極パッド
- 消毒用アルコール、不織布クロス
- 使い捨てグローブやアームカバー、靴カバー
- 担架用のシーツなど
これらはすべて感染拡大防止の観点から、出場ごとに新品が使用されます。
重症事案や特殊感染症対応時には、さらに多くの資器材が必要となります。
② 車両の維持費と燃料消費
救急車は、ストレッチャーや医療機器、通信機器を搭載した特装車両であり一般の自動車よりも車両重量が大きく燃費性能も劣ります。
- 燃料消費は、短距離走行・頻繁なブレーキ・アイドリングが多く、実用燃費は非常に悪い傾向
- サイレンや医療機器用の電力も常時使用
- 車両の整備(ブレーキ、バッテリー、タイヤ等)も頻繁に必要
このように、通常の車両以上に高い維持コストがかかっています。ンテナンス費用も高額です。
③ 人件費と運用コスト
1台の救急車には、通常3名の救急隊員(救急救命士含む)が乗車します。
24時間365日体制での運用には、以下の費用が含まれます:
- 隊員の給与・夜勤手当
- 技術研修や訓練費用
- 待機所の維持管理・制服や装備の整備費用
さらに、搬送後には車両の消毒、使用資器材の廃棄・補充、報告書作成など、次の出場準備にも時間と労力がかかります。
■ 年間でかかる総費用は?
総務省消防庁の最新速報値(2025年)によると、全国の救急出動件数は7,648,023件にのぼりました。
(出典:総務省 令和6年版 救急・救助の現況(速報))。
この数字をもとに、出動1件あたり約45,000円と仮定して単純計算すると…
7,648,023件 × 45,000円 = 約3,441億円
つまり、2025年には3,400億円を超える税金が救急搬送に使われたことになります。
これは一部の中核都市の年間予算に匹敵する規模であり、私たちが『無料』で使える裏側で、国家的な財政負担が発生しているという現実を示しています。
■ 「無料だから」と軽い気持ちで呼ぶのはNG
軽症での通報や、タクシー代わりに利用するような行為が後を絶ちません。
- 「なんとなく不安だから」
- 「病院まで遠いから」
- 「夜で交通機関がないから」
こうした理由での通報が増えると、本当に救急車を必要としている人のもとに届くのが遅れてしまうリスクがあります。
■ 医療機関では費用が発生する場合もある
救急車で病院に到着後、診察を受けた際には、通常どおりの医療費(健康保険の自己負担分)がかかります。
また、軽症と判断された場合には、『選定療養費』という名目で追加料金(数千〜1万円程度)を請求されることもあります。
■ 元救急隊員からのメッセージ
私は実際に救急車を運転・出動していた元隊員として、『救急車は走る医療現場』であり、『公共の大切な資源』だということを日々実感していました。
何度も整備が必要な車両、1回使ったら廃棄する医療用品、疲弊する隊員たち。
無料で利用できるからこそ、必要なときに正しく使っていただきたいと強く思います。
■ まとめ:救急車の費用、私たちが“払っていないだけ”
- ✅ 救急車は利用者にとっては無料
- ✅ しかし、1回の出動に約4.5万円の税金が使われている
- ✅ 年間では約3,300億円という莫大な額
- ✅ 正しい利用が、救える命を守ることにつながる
「救急車っていくらかかるの?」という疑問は、「誰かが払ってくれている“見えないコスト”がある」という答えにたどり着きます。
そのことを知っておくだけで、救急車を呼ぶときの判断が少しだけ慎重になるかもしれません。
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