まず最初にお伝えしたいのは
子どもの発熱で「病院に行くべきか」「救急車を呼ぶべきか」迷うのは、決してダメでも親として弱いわけでもない
ということです。
元救急隊として現場にいたときも
- 「こんなことで呼んでよかったのかな…」と不安そうな保護者
- 「もっと早く呼べばよかった」と自分を責める保護者
を何度も見てきました。
この記事では
- 子どもの発熱で救急車は呼ぶべきかどうか
- どんな様子が「危険なサイン」になるのか
- 病院受診や119番の目安
をできるだけわかりやすく整理していきます。
※これは元救急隊としての経験にもとづく「考え方の目安」です。
実際の診断や治療は、必ず医師や看護師など専門職の判断を優先してください。
子どもの発熱で救急車は呼ぶべきか
まず結論からいうと
「発熱だけ」を理由にすぐ救急車が必要になるケースは多くありません。
多くの場合は
- 診療時間内なら、かかりつけの小児科を受診
- 夜間や休日なら、救急外来や #8000(小児救急電話相談)などに相談
といった流れで対応できることがほとんどです。
ここで大切なのは
- 体温の「数字」だけで判断しないこと
- 子どもの「様子」も一緒に見ること
です。
「何度だから危ない」とは言い切れない
よく
- 「39℃を超えたら救急車ですか?」
- 「40℃あったら危険なんでしょうか?」
と聞かれますが現場の感覚としては
体温の高さだけでは、本当の危険度は決められない
というのが正直なところです。
例えば
- 39℃あっても、機嫌よく遊んでいて水分もよく飲めている子
- 38℃台でも、ぐったりして呼びかけに反応が薄い子
この2人を比べると数字だけ見ると前者の方が高熱ですが、注意が必要なのは後者ということも珍しくありません。
「数字+様子」で見るのがポイント
なので
- 「何度だから救急車」ではなく
- 「どんな様子が出てきたら急いで受診・119番を考えるか」
という目線で考えておくと迷ったときに少しラクになります。
次の章では「危険なサイン」の代表的な例を整理します。
危険なサインとは
ここでは、発熱に加えて「こんな様子があると要注意」というサインを挙げます。
※ひとつでも当てはまったら必ず危険という意味ではありませんが、
いくつか重なっているときは早めの受診や119番を強く検討してほしいラインです。
ぐったりしていて反応が弱い
- いつもより明らかに元気がない
- 抱っこしてもグッタリしている
- 呼びかけに反応しにくい目が合いにくい
「しっかり泣けている」「嫌がって暴れる」などは、一見大変ですがある意味“元気があるサイン”になることもあります。
一方で
泣く元気もない、目がうつろ、反応が薄い
といった状態は現場でも特に注意していたポイントです。
呼吸が苦しそう・いつもと違う
- ゼーゼー・ヒューヒューと音がする
- 肩や胸を大きく上下させて必死に呼吸している
- 唇や顔色が青っぽい・紫っぽい
- 呼吸の回数が明らかに多いまたは少ない
呼吸の異常は、体温の高さよりも優先して見るべきサインです。
水分がとれない・おしっこが極端に少ない
- 吐き気やぐったりで水分をほとんど飲めていない
- 半日以上おしっこが出ていない
- 明らかに量が少なく、色がとても濃い
- 口の中がカラカラで涙が出ていない
こういった場合は脱水が進んでいる可能性があります。
けいれんが長く続く・何度も起こる
- けいれんが5分以上続いている
- いったんおさまっても、すぐにまた始まる
- けいれんのあとも意識が戻らない・ボーッとしたまま
熱性けいれんは短時間でおさまり、その後も回復してくることが多いですが、
長引く場合や繰り返す場合は救急の対応が必要になることがあります。
顔色・手足・汗の様子がおかしい
- 顔色が真っ青、土色などいつもと明らかに違う
- 手足が冷たいのに、体は熱い
- 冷や汗をたくさんかいている
こうした「見た目の変化」も現場では重要なチェックポイントでした。
病院受診の目安
子どもの発熱で迷うポイントのひとつに
「病院に行くことで、かえって悪化しないか」という不安
がありますよね。
今はある程度元気にしているのに
- わざわざ外に出して疲れさせてしまうのでは…
- 病院の待ち時間でぐったりしそう…
- 他の病気をもらってこないか心配…
こういった不安を感じるのは親としてとても自然なことです。
なので
「受診=すぐ行かなきゃ」
「行かない=放置している」
と白黒で考えるのではなく
「行く負担」と「行くことで得られる安心・メリット」を天びんにかける
イメージで考えてみてほしいなと思います。
そのうえで次のような場合は、
「無理に様子見だけで踏ん張るより、受診してしまった方が結果的にラク」
というケースが多いと感じています。
当日〜翌日に受診を考えたいケース
例えば、こんなときです。
- 38〜39℃台の発熱が丸1日以上続いている
- 解熱剤などで一時的に下がってもすぐに高熱がぶり返す
- 熱が下がっても、いつもの元気がなかなか戻らない
- 食事はあまりとれないが水分はなんとか飲めている
- 咳や発疹、耳を痛がるなど他の症状も目立ってきた
このような場合は
- 日中ならかかりつけの小児科
- 夜間なら、地域の夜間救急や小児救急外来
- 迷うときは #8000 などの電話相談
をうまく使って「どのタイミングでどこを受診するか」を相談してみるのがおすすめです。
「安心を買う受診」もアリ
心配しすぎて
- 一晩中、子どもの様子を見続けてしまう
- 親も子も眠れず、クタクタになってしまう
こうなると家庭全体がしんどくなってしまいます。
「このまま朝まで様子を見る自信がないな…」と感じるときは
“安心を買うための受診”
という考え方も十分アリです。
「診てもらって、ひとまず大きな心配はなさそうだと分かった」
それだけでも親の心はかなり軽くなります。
結果として、子どもにも少し余裕を持って向き合えるようになることが多いです。
元救急隊だった私も親として同じように迷いました
正直にいうと元救急隊だった私自身も、親になってからまったく同じように迷ってきました。
「受診させたほうがいいとは思うけど、今はそこそこ元気に過ごしているし今日は様子を見ようかな。」
そう考えて夜を迎えたら、熱がぐっと上がって夜中ずっとぐずって寝ない。
そんなことも実際に経験しています。
今は二児の父親ですが
「あのとき病院に連れていっていればよかったのかな」
「ごめんな、苦しい思いをさせてしまったな」
と後悔した夜もあります。
元救急隊だった私でさえ、そう感じることがありました。
でも今振り返ると、そのときの判断は決して「自分勝手」ではなく
その時点で子どものことを一生懸命考えた結果だったとも思っています。
親御さんにお伝えしたいのは、どうか自分を責めすぎないでほしいということです。
その時その時で、親の考え方も揺れますし子どもの体調もコロコロ変わります。
その中で迷いながら選んだことから、きっと次につながる学びもあります。
「次に同じようなことがあったら、こうしようかな」
と考えるきっかけになっていれば、それだけでも十分価値があると私は思っています。
119番の目安
次に「迷わず救急車を呼んでほしい目安」をお伝えします。
元救急隊として、現場でよく意識していたラインをできるだけシンプルにまとめます。
こんなときはためらわず119番を
発熱に加えて、次のような様子があれば迷わず119番を検討していいレベルです。
- ぐったりしていて、呼びかけにほとんど反応しない
- 意識がもうろうとしている、目の焦点が合わない
- けいれんが5分以上続いている、または何度も繰り返す
- 呼吸が明らかに苦しそう(ゼーゼー・ヒューヒュー、大きくあえぐような呼吸)
- 唇や顔色が青い・紫っぽい
- 水分がほとんどとれず、おしっこがほとんど出ていない(特にぐったりして反応が弱いとき)
- 激しく吐いてしまい、水分がまったく飲めない状態が続いている
- 親から見て「いつもと明らかに違う」「見ていて怖い」と感じるほど様子がおかしい
ここで大切なのは、
親御さんが見ていて「これはおかしい」と感じる直感も大事な判断材料
だということです。
「こんなことで呼んでいいのかな?」と思ったとき
現場でよく聞いたのが
「こんなことで救急車を呼んでしまってすみません…」
という言葉でした。
もちろん救急車は限られた資源なので、明らかに軽い症状での呼びすぎは問題になります。
ただ
- 明らかに様子がおかしい
- 自分で病院まで連れていくのも不安
- どの病院が診てくれるかも分からない
こうした状況で「迷った末に呼んだ」のなら、それ自体を責める必要はありません。
通報のときには
- 子どもの年齢
- いつから、どのように発熱しているか
- 今いちばん気になっている様子(呼吸・反応・水分など)
を落ち着いて伝えてもらえると必要な対応につながりやすくなります。
まとめ
最後に、この記事のポイントを簡単に振り返ります。
- 子どもの発熱は「何度か」より「いつもとの様子」で見る
- ぐったり・呼吸が苦しそう・水分がとれない・けいれんが長いときは要注意
- 受診は「行く負担」と「得られる安心」で考え、不安なときは相談・受診も選択肢
- 意識・呼吸・水分・顔色に明らかな異常があれば、迷わず119番も検討してよい
子どもの具合が悪くなると、何度経験しても不安になります。
元救急隊としてお伝えしたいのは、
“迷っていい。でも、ひとりで背負い込みすぎないで”
ということです。
この記事が、発熱時の考え方を整理する一つのヒントになればうれしいです。

