「救急隊員の態度が悪かった」「ぶっきらぼうで怖かった」「サイレンの音がうるさい」——
救急現場で活動していると、時折そんな声が寄せられることがあります。
しかし、その裏には“誤解”や“現場特有の事情”があることをご存知でしょうか?
今回は、救急隊に寄せられるクレームの内容や背景、そして現場での対応について実際の経験をもとにお伝えします。
クレームの多くは「接遇」に関するもの
救急隊へのクレームで最も多いのが、態度や口調などの接遇に関するものです。
たとえば…
- 声のトーンがきつく感じた
- ため口で話された
- 笑顔がなかった
- 説明が不十分だった
など、受け取る側の印象によっては“冷たい”や“失礼”と感じられることもあります。
もちろん、相手は不安や緊張の中にいることが多く、隊員のちょっとした言葉遣いや表情が敏感に受け取られてしまうこともあるのです。
なぜそのような対応になるのか?現場の緊張感
ただ、誤解しないでいただきたいのは救急現場は時間との闘いであるということです。
特に、状態が急変する可能性のある傷病者を前にすれば隊員の言動にも自然と緊張が走ります。
情報を迅速に収集し限られた時間で処置や搬送の判断を行う必要があるため、どうしても“柔らかさ”に欠けた印象を与えてしまうことがあるのです。
私自身、現役時代に「もう少し丁寧に言えばよかった」と思うことも何度もありました。
接遇は確実に改善されつつある
とはいえ、近年では救急隊の接遇教育は確実に進んでいます。
隊員の中には、「まず自分の名前を名乗る」「目線を合わせて話す」「説明を丁寧にする」など、意識して対応している人も多くなってきました。
私が救急隊に乗りたての頃は、年配の隊長の中には言い方がきつかったり、接遇がなっていないと感じる方も確かにいました。
おそらく、それが当たり前だった時代背景もあったのでしょう。
ぶっきらぼうな口調や威圧的な態度が、悪意ではなく“慣習”として受け継がれていた部分もあったのだと思います。
ですが今では、そういったやり方が見直され、「対人である」という原点を忘れずに丁寧に接する救急隊員が増えてきたと実感しています。
どんなに忙しい現場であっても、「傷病者は不安な気持ちで救急車を呼んでいる」ということを意識すること。
それが私たちに求められる“もう一つの役割”だと感じています。
サイレン音へのクレームもあるが…
もう一つ多いのが「サイレンがうるさい」という苦情です。
特に深夜の住宅街では、「眠っている子どもが起きた」「音が近すぎてびっくりした」といった声が聞かれることがあります。
ですが、サイレンは緊急車両である救急車が法令に基づき使用することが義務付けられているものであり、勝手に音を消して走行することは基本的にはできません。
とはいえ、状況に応じて「住宅街に入ったら音量を下げる」「傷病者宅が近づいたら早めにサイレンを止める」といった柔軟な配慮をする隊も増えてきているのが現実です。
サイレンを止めて事故が起きれば…どうなるか?
サイレンを止めた結果、他の車両に気づかれずに事故が起きてしまえば本来助けるべき傷病者への到着が遅れ、さらに別の救急隊を要請しなければならなくなります。
これは、貴重な医療資源の無駄遣いになってしまいます。
「うるさい」という気持ちも理解できますが、サイレンの音には“命を守るための理由”があることを、どうか知っておいていただければと思います。
救急隊も人間、でも「命」を第一に
救急隊員も一人の人間です。
感情を持ち、疲労もします。
とはいえ、『命を守る』という強い使命感を持って日々現場に向き合っています。
クレームに真摯に向き合いながら、少しでも安心してもらえる対応を心がけているのも事実です。
少しでもその背景を知っていただけたなら、救急車のサイレンが聞こえたとき、違った気持ちで見守っていただけるかもしれません。
まとめ
- 救急隊へのクレームの多くは『接遇』に関するもの
- サイレンの音にも法的な意味と命を守る理由がある
- 現場の緊張感の中で、言動がきつくなることもある
- それでも接遇改善は進んでおり、多くの隊が努力している
クレームの声が“改善のきっかけ”となる一方で、救急隊の活動に少しでも理解が深まることを願っています。
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