多くの人は「救急隊=命を救う人たち」というイメージを持っています。
私も、救急隊としての仕事を始めたばかりの頃はそう思っていました。
しかし、現場を重ねるうちに気づいたのです。
救急隊の本当の役割は、“命を救うこと”ではなく、命を医療に届けることだと。
救急隊が担う役割とは?
- 傷病者を発見し、意識や呼吸、脈拍などを観察する
- 必要に応じて応急処置を行う
- ただし、現場で完全に命を救うことは非常に稀である
- 最終的な治療は病院の医師に委ねられる
だからこそ、「いかに悪化させず、医療につなげるか」が最も重要な任務になります。
命を“維持する”ことの難しさ
救急隊の仕事は、単に車で傷病者を運ぶだけではありません。
搬送中も呼吸や循環、意識レベルを絶えず観察し、変化があれば即座に対応する必要があります。
- 路面状況や交通状況を考慮しながら、安全かつ迅速に搬送する機関員の神経
- 隊内での連携や、病院への的確な情報伝達
- 傷病者の状態に応じて臨機応変に判断する判断力
時には、搬送先を変更する場合もあります。
その決断が傷病者の命に直結することもあるため、現場では常に緊張感が伴います。
さらに、搬送中には嘔吐による急変の可能性や、移動する背部痛など、見逃せない所見が多々あります。
わずかな変化でも見逃すと、傷病者の状態は急激に悪化することがあるため、常に注意が必要です。
見逃せない小さな変化
救急隊の真価は、わずかな変化を見逃さず、適切に対応できるかにかかっています。
例えば、搬送中にわずかに脈が弱くなる、呼吸が浅くなる、といった変化。
これを見逃さず、適切に対応できれば、傷病者の命が救われる確率は大きく変わります。
現場を経験した医師から「よくこの状態で連れてきたね」と言われることもあります。
それは、命を救うだけでなく、“繋ぐ”という責任を果たした瞬間でもあります。
結び 〜私がたどり着いた答え〜
救急隊は、ヒーローではありません。
でも、命を“つなぐ・紡ぐ”大切な一部であることに間違いはありません。
その“つなぎ方”ひとつで、傷病者の未来は大きく変わります。
私は現場で、その責任と緊張感を肌で感じながら、命と向き合ってきました。
命を直接救うことは少ないかもしれません。
しかし、医療に届けるための判断と行動こそが、傷病者の未来を左右するのです。
救急隊は、命の“搬送者”であり、“管理者”。
そして、傷病者の未来を支える見えない力である――それが、私がたどり着いた答えです。
↓↓関連記事はこちら↓↓
【2025年最新】救急車有料化はいつから?元救急隊員が解説する実施スケジュールと影響
「救急車で運ばれた」――その表現、本当に正しいのでしょうか?
救急車がサイレンを鳴らさないで帰るケースとは?元救急隊員が解説
【なぜ?】救急車を呼んだのに消防車も来る理由とは|元救急隊員が解説
救急車が有料化される!?元救急隊員が語る背景とリアルな現場の声
「誰?」じゃなくて出てほしい!救急隊員からの電話には大切な理由がある
救急車が“遅い”のには理由がある!緊急走行の裏に隠された本当の事情
【必見】救急車で搬送された後の“帰り”はどうする?家族が知っておきたい準備と対策
救急隊は土足で室内に入るのか? 〜知られざる配慮とその理由〜
コメント