【元救急隊員の本音】サイレンは“騒音”か“命のベル”か――都心で増える苦情にどう向き合うか

夜の街に響く救急車のサイレン。

「またか…」「うるさくて眠れない」と感じたことがある方もいるかもしれません。

実際、都心部の消防署にはサイレンの騒音に関する苦情が増えており、出場しても大通りに出るまでは鳴らさない、という運用をしている隊もあります。

しかし、元救急隊員の立場からすれば――サイレンは単なる“音”ではなく、傷病者の命を守るために欠かせない信号です。

私自身、指令室で119番通報を受けていたとき、電話口から「今通った救急車のサイレン、うるさすぎる!」と強い苦情を言われた経験があります。

でも同時に、サイレンを抑えることで現場到着が遅れたり事故の危険が増す現実も知っています。

では、なぜここまで苦情が増えているのでしょうか?

そして、消防・行政・住民はどう折り合いをつけるべきなのでしょうか?

この記事では 『サイレンは騒音か、それとも命のベルか』をテーマに、わかりやすく解説します。

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目次

TL;DR(要点まとめ)

  • 緊急車両は サイレンを鳴らすことで初めて優先権を得る
  • サイレンを控える運用は、事故リスクや現場到着の遅れにつながる
  • 苦情が増えた背景には 新住民の生活環境の変化行政・不動産の説明不足 がある
  • 解決のカギは「静かにさせる」ではなく、“共存する仕組み”を作ること

サイレンが必要な3つの理由

1. 気づいてもらうための“命綱”

赤色灯だけでは視界の悪い交差点や夜間に気づかれにくく、イヤホンをしている歩行者や車内で音楽を聴いているドライバーには届きません。

サイレンがあるからこそ、周囲がすぐに緊急車両を認識でき回避行動をとれるのです。

2. 法律上も『赤色灯+サイレン』で優先権が発生

道路交通法では、緊急車両が優先的に通行できるのは 赤色灯とサイレンを両方使用しているとき だけ。

赤色灯だけもしくは、サイレンだけならばどれだけ急いでいても“ただの一般車両”です。

信号も守らなければならず、現場到着が遅れる原因になります。

3. 「鳴らさない出場」が招くリスク

実際に一部の署では、裏道ではサイレンを控え、大通りに出てから鳴らす対応をしています。

しかしこれは、交差点での衝突事故や歩行者の見落としを招く可能性があり、逆に危険を増やすことにつながります。

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消防隊員のストレスと住民・不動産の“期待と現実”

昼夜を問わず“鳴らさない”運用の現実

一部の消防署では、夜間だけでなく1日を通して消防署近隣ではサイレンを鳴らさないという運用をしています。

「住民感情を刺激しないように」という配慮の結果ですが、現場で活動する隊員からすると大きなストレスになります。

なぜなら、緊急車両はサイレンを鳴らして初めて優先権を得られるのに、法的にも安全面でも矛盾した状態を強いられるからです。

「もし事故を起こしたらどうするのか」「遅れて傷病者に何かあったらどうするのか」という不安を抱えながら走るのは、想像以上の心理的負担になります。

借りる側・買う側の安心とギャップ

住まいを選ぶ際、不動産業者から「消防署が近い=安全性が高い」という説明を受けると、多くの人は安心します。

これは決して誤りではなく、実際に火災や災害時には大きなメリットになります。

ただ一方で、日常的にサイレン音を聞く頻度については十分にイメージしづらいのが現実です。

救急車や消防車を実際に呼ぶことはそう多くはありません。

それよりも、日々繰り返しサイレンを聞く時間のほうが長いため、次第に「またか…」という感情が強くなり、サイレン=騒音と捉えられてしまうのです。

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三者の立場がすれ違う背景

  • 消防署:安全のためサイレンを使いたいが、苦情に配慮して我慢している
  • 住民:安全性よりも、日常で感じる「騒音ストレス」が印象に残る
  • 不動産業者:安全性を強調するが、生活音リスクまでは伝わりきらない

こうして三者の思いがすれ違い、サイレンをめぐるトラブルが生まれているのです。

共存のためにできること

住民ができる工夫

  • 入居前に「消防署や病院が近いか」を確認する
  • 防音カーテンや耳栓など、生活を快適にする工夫を取り入れる
  • 苦情を出す前に「どうすれば安全と静けさを両立できるか」を考える

まず試せる生活音ケア(2点)

苦情の前に“できる工夫”。設置が簡単で効果を実感しやすい順に並べました。

① 睡眠用耳栓:夜間の突発音をやわらげ、入眠・二度寝をサポート。

② 防音カーテン:窓からの進入音を低減。賃貸でも導入しやすいのが利点。

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行政・消防ができること

  • 「なぜサイレンが必要か」を広報で伝える
  • 新住民へのオリエンテーションや説明会で理解を深める
  • 苦情にただ対応するのではなく、「安全を守るために譲れない点」を明確にする
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よくある質問(FAQ)

Q. 深夜でもサイレンは鳴らすの?
→ はい。安全のために必要不可欠です。

Q. 音量を下げることはできないの?
→ 車両によって音量調整は可能ですが、下げすぎれば周囲に気づかれず危険です。

Q. 救急車で行けば早く診てもらえるんでしょ?
→ いいえ。診療の優先度は「到着順」ではなく「緊急度」で決まります。

今日からできる「サイレンとの共存」チェック

  • 寝室は道路反対側に配置できるか見直す
  • 窓のすき間(サッシ・戸当たり)のテープ補強
  • 夜間だけ耳栓で睡眠環境を整える
  • 効果が実感できたら防音カーテンで“面”対策

睡眠用耳栓

防音カーテン

まとめ:サイレンは「あなたの家族を守る音」

サイレンは確かに大きな音ですが、それは傷病者の命を救うためのベルです。

もし、あなたの家族が急病や事故にあい救急車を呼んだとき、そのサイレンがあったから無事に到着できる――

そう考えると、その“うるさい音”の意味も変わってくるはずです。

私たちが目指すべきは「サイレンをなくすこと」ではなく、安全を守りながら快適に暮らす共存の仕組みを作ること。

少しの理解と工夫で、地域と緊急車両はもっと良い関係を築けるはずです。

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この記事を書いた人

高校3年で「安定していそう」という理由から国家三種を受験し、合格。
高校卒業後に入職したのは、ちょうど郵政組織が「公社化」へ移行するタイミングでした。
受験時は国家公務員として受けたつもりが、気づけば郵政公社。
制度の変化もよく分からないままのスタートでした。

その後、「もっと現場で人の役に立ちたい」との思いから消防職員に転職。
救急隊員として十数年、命の最前線で活動してきました。
多くの現場を経験する中で、「働くこと」「人生の選択」について深く考えるようになり、現在は民間企業に転職しています。

このブログでは、公務員試験や公務員としての実情、そしてその後のキャリア選択について、実体験をもとに発信。
救急や消防のリアルを知ってもらうことで、救急車の適正利用や防災意識の向上につながれば とも願っています。

公務員という“安定した仕事”の内側や、そこからの転職に悩む人にとって、少しでもヒントや勇気になれば嬉しいです。

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